a 京都大学 触媒・電池元素戦略ユニット (eSICB),〒 615-8520 京都府京都市西京区京都大学桂 b 北海道大学 理学部化学科,〒 060-0810 札幌市北区北 10 条西 8 丁目 c 北海道大学 大学院総合化学院,〒 060-0810 札幌市北区北 10 条西 8 丁目 原子クラスターは自由度が高いために多くの構造異性体を持つ.通常の理論研究では,その最安定構 造の探索と続く電子物性解析が主であったが,近年の理論化学的手法の発展により,安定構造間の異性化 反応や,異性体を含めた触媒活性の研究が可能になってきた.本研究では,金,銀,銅のクラスターを対 象として安定構造および異性化反応経路,および NO 解離の触媒反応経路の探索を行いその比較を行った. 異性化反応の計算からは,金と銀に比べると銅は異性化反応の障壁が高く,これはバルクのモース硬度と 同様の傾向を示していた.NO 解離反応の触媒作用に関しては,金と銀は障壁が高い一方で,銅は障壁が 低く,安価で豊富な元素による触媒の可能性があることが分かった. キーワード : AFIR, Metal cluster, Isomerization, NO dissociation, Cluster catalyst, Density functional theory 1 数原子から数百原子程度までで構成されるクラスター は,サイズや組成に強く依存するノンスケーラブルな物 理化学的および触媒的性質を持つことが知られており, 光電子デバイス,センサーおよび触媒の新材料として期 待されている [1, 2].バルクで不活性な金は,ナノ粒子 化すると CO 酸化反応に対して触媒作用を示すことから [3, 4],金クラスターの研究も盛んに行われており,構造 や安定性のサイズ依存性,触媒活性のサイズ依存性ある いは表面担持効果など様々な研究が進められている [5]. このような研究から,クラスターは触媒活性を含む様々 な物性が原子数に強く依存することが分かってきた.材 料開発の観点からは,原子数を適切に選択することで望 みの性能を持つ触媒を創成できる可能性があり,Pt, Pd, Rh などの希少金属が多く使われている自動車の三元触 媒として Cu, Fe, Ni などの汎用金属クラスターの利用が 期待されている. クラスターに基づく革新的な材料の理解と設計に対し て理論的アプローチは必要不可欠である.クラスターの 理論研究では,通常与えられた組成における最安定構造 の探索から始まり,それから物理・化学的性質を解析す る.多数の大域的構造探索法 (例えば basin-hopping (BH) 法 [6, 7] や遺伝的アルゴリズム [8, 9] など) が開発されて おり,様々な組成をもつクラスターの最安定構造の探索 に利用されてきた [10-14].最近の理論的研究では,必 ずしも最安定な構造のクラスターが最も高い触媒活性を 持つとは限らず,準安定な異性体が低い活性障壁を持つ 場合があることが指摘されている [15, 16].また,クラ スターにおける低いエネルギーを持つ異性体間の構造変 化についても最近議論されている [17].クラスターのよ うな多自由度の系において反応経路を求める場合には,
CITATION STYLE
KONDO, Y., TAKAHARA, R., MOHRI, H., TAKAGI, M., MAEDA, S., IWASA, T., & TAKETSUGU, T. (2019). Structural and Electronic Properties, Isomerization, and NO Dissociation Reactions on Au, Ag, Cu Clusters. Journal of Computer Chemistry, Japan, 18(1), 64–69. https://doi.org/10.2477/jccj.2018-0044
Mendeley helps you to discover research relevant for your work.