【要 旨】 スケート選手を対象とし,寒冷環境下での身 体活動がサイトカイン応答に及ぼす影響を寒 冷適応の有無から検討した.寒冷環境適応者 のショートトラックスケーター,寒冷環境不 適応者のインラインスケーター,それぞれ男 子 10 名を被験者とし,60 分間の寒冷 (5~ 8℃) または常温 (20~25℃) にて安静状態を 維持した後, 最大酸素摂取量の 65%強度に相 当する自転車エルゴメーター運動を 60 分間 負荷し,常温で 120 分間安静状態維持を実施 した.採血は,安静時,寒冷ないし常温下で 60 分安静後,運動負荷直後,30 分後,60 分 後,120 分後の計 6 回肘静脈より行い,血漿 を分離した.サイトカインの濃度は酵素免疫 測定法により測定した.寒冷環境適応者が常 温で運動すると IL-1ra,IL-10, IL-12p40 などの サイトカインが誘導されるが,これらの運動 時のサイトカイン応答は寒冷(冷却)によっ て抑制できることが評価できた. 【キーワード】 寒冷,運動負荷,ストレス,サイトカイン はじめに 寒冷が免疫機能に及ぼす影響については,冬季に練習 を行う競技者や軍隊の野外訓練を行う者に,鼻炎,咽頭 炎を主症状とする上気道感染症の易感染性が報告されて いることから,寒冷環境は免疫機能を低下させる可能性 がある 1,2) .寒冷曝露に関する実験的研究では,リンパ球 幼若化反応の低下,ナチュラル・キラー細胞の細胞数減 少および細胞傷害活性の低下,補体の活性化,熱ショッ クタンパク質の誘導が報告されている 3-5) .このメカニズ ムは未だ解明されていないが,寒冷時に分泌されるスト レスホルモンには免疫細胞の動員・機能修飾作用がある ため,寒冷環境での免疫応答には内分泌系が重要な役割 を演じると考えられる 6) .寒冷環境での免疫応答につい て動物を用いた多くの報告では,動物を冷水に浸水させ るモデルを用いているが,動物が寒冷以外の精神的スト レスの影響を受けている可能性もあり,寒冷反応のみの 影響を評価できるとはいえない.寒冷環境への適応には 2~3 週間かかることが動物実験で報告されているが 7) , ヒトの寒冷環境への適応および寒冷と運動時のサイトカ イン応答を組み合わせて,免疫機能の低下やストレス・ 筋損傷との関連を検討した報告はほとんどみられない. 一方で,高温や暑熱環境下で運動やスポーツ活動を行う と熱中症につながる危険性があり,高サイトカイン血症 も起こりやすくなることが報告されているが 6) ,寒冷環 境はこのような運動による高サイトカイン血症を抑制す 受理日:2009 年 2 月 18 日 * 〒359-1192 所沢市三ヶ島 2-579-15 早稲田大学スポーツ科学学術院
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KONDOU, T., OGAWA, K., TERADA, O., KIM, K., OKUTSU, M., & SUZUKI, K. (2009). Cytokine Response to Exercise during Exposure to Cold. Japanese Journal of Complementary and Alternative Medicine, 6(2), 89–95. https://doi.org/10.1625/jcam.6.89
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